軸屋良介先生が、第112回日本泌尿器科学会総会にて総会賞(臨床)を受賞しました
- Admin(KR)
- 5月3日
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軸屋良介先生が、第112回日本泌尿器科学会総会にて総会賞(臨床)を受賞しました。
2025年4月17日~19日に福岡で行われた第112回日本泌尿器科学会総会にて、軸屋良介先生の「Multi-dimensional profiling of rare kidney cancers facilitates precision medicine for kidney cancer patients」が、総会賞(臨床)を受賞しました。軸屋先生は昨年の受賞に続き、2年連続の受賞になります。
腎癌は多種多様な腫瘍特性を示し、臨床の現場ではこれらをきちんと分類し、それぞれに対して最適な治療を行う必要があります(これを精密医療と言います)。しかしながら、腎癌の分類は非常に複雑で全てをうまく分類しきれていないため、それぞれの患者さんにベストな治療を行えていないのが実情です。また、一人の患者さんの腎癌の中でも様々な癌細胞が混在し(これを腫瘍内不均一性と言います)、薬が効かない細胞が残ってしまうことも問題です。
これまで私達はこれらの腎癌の多様性や複雑性を紐解くために、シングルセル遺伝子発現解析や全ゲノム解析といった最新の手法を用いて、様々な解析を行ってきました(EBioMedicine.2023 Jun:92:104596., iScience.2022 May 25;25(6):104463.)。これらを通じて、腎癌の多様性や複雑性は、腎癌に関係する遺伝子が非常に多いことや、腎臓の細胞には近位尿細管、遠位尿細管、集合管を始め他の臓器と比べて癌の起源となる細胞の種類が非常に多いことなどに起因することなどを報告しました。
今回、軸屋先生は、理化学研究所がんゲノム研究チーム、横浜市立大学分子病理学、同免疫学教室、同マルチオミックスによる遺伝子発現制御の先端的医学共同研究拠点、同遺伝子診療科、同臓器再生教室、岩手医科大学、秋田大学、北海道大学、熊本大学、東京大学医科学研究所、同先端科学技術研究センター、愛知医科大学、東京女子医科大学、がん研有明病院、日本医科大学、韓国慶熙大学校、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、アメリカ国立衛生研究所などとの国際共同研究を通じて、多様な腎癌をいかに臨床の現場で分類していくかというより実践的な課題に取り組み、希少な腎癌を2万種類以上の遺伝子発現を基に分類して図鑑のようなものを作り(発現アトラス)、性質を知りたい別の腎癌をその発現アトラスに投げることでその癌の性質を類推できるという新規アルゴリズムの確立に成功しました。これにより、これまでまったく分類ができなかった腎癌もこのアルゴリズムに投げることでその腎癌の性質を理解できるようになり、さらにはその癌が将来どのような経過を辿るのかについても予測できるようになります。現在、臨床の現場ではゲノムパネル検査という遺伝子の傷を見つける方法が用いられていますが、腎癌のような複雑な癌では遺伝子の傷が見つからないことも多く、今回、軸屋先生が構築したアルゴリズムを臨床現場に導入されれば、個々の患者さんにあった最適な医療が実現可能になります。並行して、空間的遺伝子発現解析という最新の手法を用いた研究の成果についても報告し、悪性度の高い腎癌において腫瘍内不均一性がどのように形成されるかについて報告させていただきました。これらの新しい知見は、悪性度の高い腎癌に対する薬の効きづらさを克服し、患者さんが根治する上での新しい治療法の開発に繋がります。軸屋先生、誠におめでとうございます。

