top of page

軸屋良介先生が、第111回泌尿器科学会総会で総会賞を受賞しました。




本学泌尿器科学教室助教の軸屋良介先生が、2024年4月に開催された第111回泌尿器科学会総会(パシフィコ横浜)で総会賞を受賞しました。

演題名は" Multi-omics analyses develop a foundation for precision medicine for chromophobe renal cell carcinoma and BHD-associated renal tumor "です。


本発表では、遺伝性と散発性(非遺伝性)の腎がんの統合的マルチオミクス解析から、「腎がんの自然史」、すなわちそれぞれの腎がんが、どの腎臓細胞から発生したか、そしてそれらの細胞がいつ癌化したか、そしてどのように増殖し、がんの不均一な組織を形成したかを明らかにし、その研究内容を発表しました。

 

私達の日頃の腎がん診療において重要な点は、「目の前の腎がんが今後どのような経過を辿るか」を知ることです。進行が速く転移しやすい腎がんであれば、早急に治療介入する必要があります。一方で進行の遅い腎がんであれば、経過観察が可能になります。現状の腎がん診療では、診察時点でのがんの所見から今後の経過を予測しますが、予測と異なる経過を辿ることは多々あります。そこで、各腎がんの自然史と、それに基づくがんの特徴を知ることが出来れば、そのがんが今後どのような経過を辿るかや、有効な治療法を選択する上で重要な情報となります。

 

そこで本研究では、がんの自然史に着目した解析を行い、下記を明らかにしました。

1) どの腎臓細胞から発生したか

がんの種類ごとに起源となる正常腎臓細胞が異なり、それによりがんとしての特徴が異なることが分かりました。

2) いつ癌化したか

遺伝性のBHD腎がんでは診断の約30年前、20歳頃に原因遺伝子フォリクリン(FLCN)の完全欠損が生じ、そこから直線的に緩徐な増殖を示すことが明らかになりました。これは実際の臨床現場で腎がんの治療介入時期を決める上での重要な科学的根拠となります。

3) どのように増殖したか

腎がんでは正常の腎臓の発生・分化機構の一部を利用して増殖し、その結果、がんの組織内あるいは組織間での不均一性を形成していることが分かりました。

 

今回の研究成果により、これまで目の前に現れたその一点でしか見ていなかった腎がんに対して、時間軸を遡り、その発生と成長過程を推測することにより、腎がんが今後どのような経過を辿っていくかを予測して、最適なアプローチ方法を選択することが可能となります。

今回の研究成果は、腎腫瘍化機構に基づく精密医療の開発および、腎がんの適切な検診法や治療介入時期の決定に大きく役立ちます。




軸屋先生先生、おめでとうございます。


(受賞後、本学にて槙山主任教授と)

bottom of page